March 21, 2008
剣道日誌34

平成20年1月12日、昭和63年より20年間成蹊大学剣道部師範として学生や卒業生を指導して頂いた青木敬汎先生(範士八段)が御退任され、師範としての最後の稽古会が催された。青木先生も80歳を超え、体力的に学生と稽古をすることがきつくなってきたところであった。今後は名誉師範として自由な立場で稽古をお願いすることにした。
青木先生には沢山のことを学ばせていただいた。大変に穏やかで、学生のことをとても気にしていただいた。練習試合でもメモを取り、学生に分かり易く助言をしていただいた。
卒業生も争って先生にご指導を頂いたが、私もその1人で先生とご一緒する時は必ず稽古をいただき矯正をしていただいた。先生と剣を合わせると小学生のようになり、「まだまだ、まだまだ」と逸る気持ちを抑えられ、構えているだけで汗がじっとでてきたものだ。
先生は私達にも敬語を使い、穏やかに話されていたが、試合になると相手をぐっと押さえ込むような気迫を持って攻めなさいと常々言っておられた。面をつけたときの気迫と、面を取ったときの穏やかさと両面を持った大変尊敬のできる先生であった。
2年前、先生を一番慕っていた雨宮君が急逝し、今年は青木先生が御退任され、剣道部も寂しくなるが、これからも先生が元気な間は稽古をお願いするつもりである。
昨年、卒業生の試合が大学で行なわれた時、先生はいつものようにメモを取り、試合をじっと見ていた。試合が終わると先生はノートを破り私達のところへ持ってきて、皆に回した。私は2試合行なったが、先生のメモを見てあっと驚いた。
メモには「打つ瞬間に息を吸っている。これでは相手に分かってしまう。返し胴は早く。2試合目は双方ともりっぱな立会いであった」先生はコートの外から私の息遣いまで見てとっている。背筋が寒くなった。これでは剣を交えたらすべてお見通しだと脱帽である。
少し温かくなったら先生を雨宮君の待つ妙義へお誘いして見ようかと思っている。