October 17, 2009

「天才チンパンジー」ついて考える

チンパンジーの学習能力や記憶力が高いことはよく知られている。昔から天才チンパンジーと呼ばれるものがいた。最近では某テレビ局のパン君が有名である。
京都大学霊長類研究所などによる面白い実験結果が新聞に発表されていた。
2頭のチンパンジーを、穴の開いた透明な板で仕切った隣同士の部屋に入れ、ステッキがあれば部屋の外にあるジュースを手に入れられるチンパンジーにはストローを、ストローがあればジュースを飲めるチンパンジーにはステッキを持たせる。すると約60%の確立で道具の受け渡しが見られた。片方にだけ道具を与えた場合でもたいてい相手に渡していた。
これは9匹の雌を6つのペアにして24回ずつ実験しての結果であるという。

ただし、ここがポイントであるが、携わった研究員によれば、道具を渡すのは、相手が穴から手を伸ばすなど明確に道具を要求した場合がほとんどであったという。相手が自分の容器を引き寄せようと必死に手を伸ばすなどしていても、道具を要求するそぶりを見せなければ自発的に手渡すことは無く、人間のように困っている仲間を助けることは極めて少なかったという。

自発的にというところが人間とチンパンジーとの分かれ道なのである。
そうすると、われわれの社会にはいかに人間らしい人間が少ないかが分かる。実は、天才チンパンジーの群れの中に僅かな人間が同居しているのかもしれない。
言われなければ、与えられなければ、仕事が出来ない天才チンパンジー。電車の中で席を譲ろうとしない天才チンパンジー、自分の欲望のために人を傷つける天才チンパンジー、注意されなければルールを逸脱する天才チンパンジー数え上げたらきりがない。
チンパンジーであれば、天才ともてはやされるが、人間では迷惑ものである。

人間に進化するということは、大変なことなのだ。自分が普通の人間だと思っている天才チンパンジーほど始末に悪いものは無い。


cpiblog00620 at 17:06│Comments(0)TrackBack(0)clip!

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